いがらむ

カルメンという名の女のいがらむのレビュー・感想・評価

カルメンという名の女(1983年製作の映画)
3.7
ゴダールが奏でる尽きせぬシネマでもフィルムでもムービーでもない(そのすべてである)映画の魅力。常に自己批判的で自己陶酔的な作風をどう処理しようか(冒頭のヴェネツィア金獅子賞うんぬんの描写)。カメラをポンと置いてその無作為性で揺さぶる画面と、律儀なまでに統率されたモンタージュの往復ビンタ。カットが変われば世界が変わる、だからこそ音楽で世界を貫くといういまだかつてなかったであろう試み。顕にされる裸体よりも、その両義性がはるかにエロティックだ。激しく銃撃戦がなされる中で同じカットにふたつの世界-全く動じない人がいること。どんなにアバンギャルドに見えても全ては運動と労働の記録、という原理性の話をしたくなる魔力がゴダールの作品にはあるから辛いと分かってても見てしまうのだろう。あのガウンの黄色、車の青、ブレザーの赤。4:3(1:1?)の美しい四角。そこにスポッと律儀におさまるゴダール本人のチャーム。なかなか言葉では尽くしがたい魅力に満ち溢れた一作だ
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