みおこし

民衆の敵のみおこしのレビュー・感想・評価

民衆の敵(1931年製作の映画)
3.4
シカゴで生まれたアイルランド系アメリカ人のトムとマットは幼馴染で、いつしかノーズという悪党の影響で万引きなどの非行に走るようになる。トムの母親は息子がそんな悪事を働いているとは信じていなかったが、成長した彼は本格的に犯罪に手を染めはじめ、ついに毛皮泥棒をして警察に捕まってしまう…。

本作がジョニー・デップがジョン・デリンジャーを演じた『パブリック・エネミーズ』の元ネタだとずっと勘違いしていたのですが、全然違ってびっくり。ジェームズ・キャグニーがギャング映画のスターとして人気を博すきっかけとなった作品。よくよく考えると、1931年当時は禁酒法時代真っただ中。アル・カポネがバリバリ暗躍していた頃と思うと、まさに『アンタッチャブル』の世界を人々は生きてたんですね…!そう考えると、本作に登場するトムの生き方は本当に説得力があるというかリアルを体現しているんだろうなあ。
ヘイズ・コード施行前ということで、有名な女性を平手打ちするシーンがあったり当時としてはちょっとびっくりな暴力描写がたくさん出てくるし、ヒロインのジーン・ハーローもとびきりセクシーだし、公開当時にセンセーションを巻き起こしたのも納得の内容でした。

しかし、ただのギャング映画で終わらず、息子を信じ続ける母親との関係性にフォーカスしている点などが興味深かったです。性善説と言い切れるか分かりませんが、どんな悪人にもそれに至るまでのドラマやきっかけがあるわけなので、単にアウトローを描いただけではない点が素晴らしかったです。
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