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恋する女たちのryotaのネタバレレビュー・内容・結末

恋する女たち(1986年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

大森一樹監督追悼の意味も込めて、何か作品を見直そうと思いこちらをセレクトしました。評価の高い作品というより、私が一番当時好きだった作品だったからです。「ヒポクラテスたち」も好きだけど、あえてこのアイドル映画を見かえすことにしました。当時ものすごく違和感を持ちつつ、すごーって感心した覚えがあります。

話はあってないようなもので、奥手女子の恋愛考察と顛末をただひたすら会話によって展開していくだけです。大きな事件は起きませんし、全体的に可愛らしい、たわいもない出来事ばかりです。斉藤由貴は当時大人気アイドルだったから、おそらく彼女目当てで観た人たくさんいるんじゃないかな。そんな、東宝の目玉作品みたいな扱い(だった気がする)なのに、監督はいつも通りの脚本と演出で、それがすごいなあって感心しました。特徴的な台詞回しは輪をかけて健在で、映画とかドラマといった映像作品にはむしろそぐわないくらいに畳みかけてるんですが、おそらくそんなこと百も承知で、「これは俺の映画だ!」と言わんばかりに最初から最後まで貫いています。そこ、大好きです。まるで演劇を観ている感覚に陥りますが、それってまんまと監督の趣向にハマってしまったという幸せなことですよね。前にも何かで書きましたが、映画を観て「おお、すごいじゃん」「楽しいぜ」なんて、思ったもん勝ちですから。

冒頭のお葬式シーン(これも可愛い導入)から、最後の岸壁でのお茶会まで、まさにツルゲーネフを意識してるかの如く主人公のモノローグ(時々、文字)とセリフの応酬が楽しいです。共演者も今や懐かしくもあり、若くもある個性派俳優がゾロゾロ出ていて、それも楽しい。小林聡美、好きだったなあ笑。この後、90年代になってトレンディドラマ(ラブコメ)が量産されるけど、今見てもこの作品は量産されたものの一つではなく、大森一樹監督の作品として、しっかり認知できると思います。

自主映画からいきなり「オレンジロード急行」で松竹映画を撮り、ATGの代表作「ヒポクラテスたち」。斉藤由貴の映画も三部作あるし、ゴジラシリーズも。だんだんと商業映画に揉まれて少しずつ監督のパワーが弱まってしまった様なことも言われてますが、この作品を見る限り、才能に溢れた映画作家の一人であったことは間違いないと確信しています。ご冥福をお祈りいたします。
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