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ディア・ハンターのYYamadaのレビュー・感想・評価

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
3.9
【戴冠!アカデミー作品賞】
 第51回 (1978) アカデミー5部門受賞
 (作品/監督/助演男優/音響/編集)

【戦争映画のススメ】
ディア・ハンター (1978)
◆本作で描かれる戦地
ベトナム戦争 (フィクション)
◆本作のポジショニング
 人間ドラマ □□■□□ アクション

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・60年代末、ペンシルバニアの製鋼所で働くマイケル、ニック、スティーブンたちは休日になると鹿狩りを楽しんでいた。やがてマイケルたちは徴兵され、ベトナムへ。
・彼らは戦場で再会するが、捕虜となり、残酷な拷問ゲームを強要される。マイケルの機転で脱出に成功するが、その後ニックは行方不明に。マイケルは彼を捜すが…。

〈見処〉
①青春をともに過ごした故郷の山。帰らぬ友をもとめ男はまた戦場へ旅立つ——
・『ディア・ハンター』は、1978年に製作された戦争映画。監督は、1974年の「サンダーボルト」で長編監督デビューし、2作目の監督作となった本作で大きな成功を収めたマイケル・チミノ。
・当時のアメリカ映画ではタブーであった「ベトナム戦争」の題材に対し、イギリス系のEMIから資金提供を受け、製作された本作は「ベトナム戦争を題材にした最高傑作の一つ」と称された本作は、批評面で大きな成功を果たし、第51回アカデミー賞では作品賞、監督賞、助演男優賞など5部門を制している。また、1996年には「アメリカ国立フィルム登録簿」に登録された。
・主演はロバート・デ・ニーロ。共演のクリストファー・ウォーケンは、米とバナナと水だけを食べ続け、ベトナム戦争の後遺症にて心身疲弊し痩せ切った青年を熱演。本作でアカデミー助演男優賞を受賞。
・また、当時デビュー間もないながら、本作でアカデミー助演女優賞にノミネートされたメリル・ストリープに加え、当時の彼女の婚約者であった『ゴッドファーザー』フレド役で有名なジョン・カザールも本作に出演。
・カザールは撮影前に癌を患い、製作会社は彼の降板を催促したが、チミノ監督、デ・ニーロ、ストリープらが「カザールが降板するなら自分も降板する」と主張し降板は免れたが、カザールは公開を待たずに死去。本作がカザールの遺作となったが、カザールが生涯出演した5本の映画すべてがアカデミー賞にノミネートされて、そのうち本作品を含めた3本が作品賞を受賞したこととなった。

②ロシアン・ルーレット
・ベトナム戦争で心身に深い傷を負った男たちの苦悩と友情、そして戦争の狂気を描いた本作であるが、基となったのはラスべガスにロシアン・ルーレットを行う男たちを描がいた舞台用脚本。そのままでは映画化のインパクトに欠けるため、戦争映画の帰還兵の物語に置き換えられた。
・本作のロシアン・ルーレットのシーンの撮影では、実弾を込めた銃が使用し、引き金をひく前に弾倉が空にするなどで緊張感を高め、撮影中の俳優に対しても実際に檄を飛ばし殴打することで、迫真の演技を引き出した結果「映画史に残る狂乱のシーン」と称された。
・アメリカ人にとって忘れ難き苦痛である「ベトナム戦争」の戦闘シーンを描かず、戦争の狂気を見事に描いた本作となったが、実際のベトナム戦争では、ロシアンルーレットに関する記録はないとニューヨーク・タイムズに指摘され、ベトナム人からも抗議を受けている。本作が出品されたベルリン国際映画祭では、共産主義の国々が、本作の内容に抗議して出品を見送るなど波紋が広がった。
・また、本作のロシアン・ルーレットを真似、約30人が事故で亡くなったとも云われている。

③結び…本作の見処は?
◎:「戦闘シーンなく戦争の恐ろしさを描く映画」。戦地に赴く前後を対比させている本作であるが、いずれも重苦しい雰囲気がボティ・ブローのように響く作風は、まさに「アメリカン・ニューシネマ」。アメリカ史上最も暗転としていた、ボロボロの時代の青春群像の名作。
◎: 本作の最大の見どころは中盤に登場する「戦地のロシアン・ルーレット」。ダイバーシティ叫ばれる現在では、決して撮影出来ない。
○: 存在感を見せるクリストファー・ウォーケンとメリル・ストリープの演技に対して、一歩引いた印象を受けるロバート・デ・ニーロに、主演男優としての矜持を感じることが出来る。
▲: 長く、暗く、救いようがない。メンタルが正常レベルの時に鑑賞したい。
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