ダイナ

ディア・ハンターのダイナのレビュー・感想・評価

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
4.2
徴兵を経て肉体的・精神的に傷ついた男達を描いたヒューマンドラマ。戦争を取り扱ってはいるものの戦争そのもの自体はあまり映さず、戦争が与えた影響のショッキングさによりその壮絶さを感じさせるという映し方。現地、ロシアン・ルーレットをさせられる主人公達の絶望・覚悟・激怒。死にたくない、しかし自分が勝つということは友人が死ぬ。最悪を強いられた彼らが辿る三者三様の道に気が滅入るものの見入ります。

友人関係でのやり取りが本作の見所ではありますが、凄みを感じるビジュアル面の魅力も多分。命を賭けたロシアン・ルーレットのシーンは言わずもがな、戦地での川→橋→ヘリというポジション遷移はかなり体を張っており、朽ちた橋との合流タイミングや役者の体力、過酷な環境下での移動はド迫力。繰り返されるテーマ曲の繊細なメロディも印象的で、時折挟まれる優しさ描写が本作の残酷さを際立たせるスパイスに。

タイトルにも掲げられている鹿狩り。本作で映される鹿狩りの1回目と2回目での主人公の映し方、様子の違いが興味深かった所でした。アメリカ的要素を含んだ結末にはテーマの解釈が分かれそうで、未だにどう受け止めれば良いか自分の中で答えが出ていませんがその点含めて再鑑賞の意欲は湧く良作と感じています。

アル・パチーノの古くからの旧友というだけでなく本作にてチミノとデ・ニーロ、メリル・ストリープからの熱い支援を受けていたジョン・カザールの最後の出演作ということで(本撮影中に他界)。名バイプレイヤーである彼の最後の演技を見納められて良かったです。全裸疾走デ・ニーロで笑っていられるのは序盤まで。
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