たにたに

ディア・ハンターのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

【一発で仕留める】2022年152本目

センチな青春と緊迫感あるベトナム戦争のギャップを見事に描いた長編作。

1部はベトナム戦争壮行会プラス結婚式。
2部は緊迫感あるベトナム戦争地。
3部はベトナム戦争後の若者達の行方。

1部では仲の良い男女の若者達が、酒を飲み、踊り狂い、そして歌って、盛大に結婚パーティーを開く。
ここで戦争映画の"暗い"という先入観を打ち砕かれ、いわゆる人生を謳歌する華々しい人生を辿っていきそうな若者達が描かれる。皆で「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」を歌う姿はかなり印象的だ。こうやってみんなでワイワイ楽しくボウリングや鹿狩りなどして過ごしているけれど、徴兵され戦地に向かわなければならないというのは誰しもがあり得た話だということだ。
1部の最後では、再び酒場で集まって1人が「ノクターン第6番ト短調作品15の3」をピアノで奏でると、皆神妙な面持ちへと変わっていき静かなシーンとなる。現実へと引き戻され、不安な表情にも見える。
ここから2部の戦地へと変わるシーンがとにかく良い。完璧な流れ。

2部では戦地で捕まり、ロシアンルーレットを強制される。ここのスティーヴンの演技が光る。新婚であるし、故郷には妻と子どももいる。死にたくない、帰りたい、と過呼吸になるのも当然だ。しっかりと彼の心情を描いていることに感激した。
それをなだめるロバートデニーロの存在感もしっかりと描かれ、ニックのその後のトラウマもここで完璧に描かれる。

3部では故郷でニックの帰りを待つメリル・ストリープの姿に焦点が当てられ、1人帰ったデニーロ演じるマイケルとの絶妙な関係性がたまらないのである。
ニックが生きていると分かると、迎えに行こうと再びベトナムに向かうマイケルだが、ニックの心の傷は、薬物などの影響もあり、深く染み付いてしまってあり、記憶も失いかけてる中で、ロシアンルーレットで自死してしまうシーンは目を塞ぎたくなる恐怖だ。
マイケルが馬鹿なことをやめろと、ニックを説得する中で、なんとか思い留めさせようと鹿狩りの話題を持ち出す。

一発で仕留めるマイケルは、戦争前と戦争後ではその心情に変化があった。

本作品には、"銃の引き金を引く"ことの重さを示しているように思う。


ただの戦争映画であれば、これほどまでの高評価にならなかったかもしれない。
最後みなで歌うゴッドブレスアメリカで心を持っていかれました。
たにたに

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