Lila

ディア・ハンターのLilaのレビュー・感想・評価

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
5.0
今なら観れるかもと思い、デニーロの代表作にチャレンジ。噂に聞いていた通り、これは最高峰のデニーロです。脂乗りつつエッジも効いてる美しいバランス。演技や俳優とかのレベルを超えて、ドキュメンタリーなのではないかと思うほどの貫禄。超主役なのに、どセンター過ぎない寡黙な台詞回し。全て圧巻で見惚れました。

開始早々から、全員若過ぎて、とんでもなく色気あって、気を失いかけました。さすが往年のレジェンド俳優たち…レベルが違いますね。若かりしデニーロはこんなにも男前だったか。メリル・ストリープはこんなにも儚かったか。クリストファー・ウォーケンはこんなにも美しかったか。

想像よりも最初から観やすくて没入しやすい。3時間!?って最初は腰が引けましたが、それもそのはず、序盤の結婚式シーンだけでまさかの1時間。一緒に宴に参加してるレベルの長さです。

その余韻から一転、ベトナム戦争の地獄絵図。結婚式尺の半分の時間でしたが、過酷で強烈で、影響力は時間の長さの問題ではないと突きつけられます。観てるだけでトラウマレベル。デニーロがもう….男すぎてもう…

ペンシルバニアに戻ってから、まるでループのように序盤の生活に戻りますが、観てる方ですら、あのテンションには戻れません。観てる方ですら辛い。

ロシアンルーレットは戦争で命を賭けることや、鹿狩りにかかっているかと思いますが、これが軸でしたね。なぜこんなに拘ってるのかと思いましたが、そうか、戦争が後付けなのか。

マイケルのお陰で命は助かったスティーブンとニックだけれども、それ以降の人生を考えたら「何が生きることなのか」「死の意味とは」を考えさせられます。

誰もが変わってしまい、誰もが同じ人ではない。足を失った者、心を失った者、愛する誰かを失った者。とにかく全員何かを失い、2度と元に戻らない。なぜ前半と結婚式をあんなに長い尺にしたのか効いてきます。最後の乾杯のシーンもラストカットもキメにキメた静止画じゃなくて、何気ないところのカットだからこその現実味。エンドロールは、キャストが懐かしき日々の笑顔で虚しさが襲います。

全カット綺麗で音楽も絶妙。描写もリアルで、制作費が大幅にオーバーした訳がわかります。

あっという間に観れてしまいました。
紛れもない名演、名作です。
ここ最近観た映画で1番と言って良いぐらい。それぐらいの衝撃と感動です。

私にとって、これが映画として最も「完璧」に近いのかもしれない。5.0をつけたのは、この作品だけです。

チミノ監督のインタビュー。これはめちゃくちゃクオリティ良いです。戦争に影響された「人」を描きたかった想いとは。

https://youtu.be/Z6SzHkCmDTQ?si=MptrhE9AszE6pY8o

追記: 監督インタビューによるとヘリコプターに乗っているのは彼自身であり、引き揚げようとする手は彼の手であり、デニーロとサヴェージが川に落ちるシーンは本人たちであり、ロケ地のタイ入りしてからの1ヶ月は着替え禁止、シャワー禁止、飲酒禁止を徹底して、あの雰囲気を作ったとか。映画を作れた時代としか言いようがないです。

そして、プロモーション活動を策略的に攻略して公開に至ったとのことで、良い子ちゃんのストレートプレイでは、この映画は届けられなかったでしょう。
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