ベネフィット

ディア・ハンターのベネフィットのレビュー・感想・評価

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
3.5
映画史に残るロシアンルーレット、のように見える。
ただ、やはりアメリカ側のベトナム戦争しか描かれていない。ベトナム人はこんなロシアンルーレットで命を弄ぶ人種として描かれており、ベトナム側としては到底納得できないだろう。例えば、映画公開の7年前にニューヨーク・タイムズからベトナム戦争のきっかけとなったトンキン事件はアメリカのでっち上げであることが暴露されたが、そこには全く触れないで正当化するのか?枯葉剤は?病院や学校まで次々に爆撃したことの反省は?とそう思うのは至極自然なことだろう。反戦映画は、やはり自らのマイナス面と向き合わねばその資格はないと言わざるを得ない。その意味で反戦映画と言い切るには疑問が残る。本作では、あくまで「ベトナムでこんな風にされてしまった我が国・アメリカ人」として描かれており、ベトナム戦争自体の考察に乏しく、またアメリカが介入したことの是非、アメリカ側が現地で行った戦争犯罪などの反省も皆無である。これらに触れもせずに一方的に悲劇として描くのはどうなのだろうかとやはり疑問が残る。主人公マイケルとニックは確かに悲劇だが、ベトナムにも同様に悲劇があったはずだ。批評家らの評価が割れたそうだが、大いに納得出来る。
大量破壊兵器保有が戦争の大義だったイラク戦争でも結局それはアメリカのでっち上げ、ベトナム戦争の反省は全く活かされていないことを考えても、こういった映画で自らを被害者かのように描いていたのはあまりに卑怯ではないのか。せめて映画「カジュアリティーズ」も鑑賞した上で、ベトナム戦争を考えたい。

以下レビューアンローズより抜粋⬇
AP通信のピューリッツァー賞受賞記者ピーター・アーネットは、ベトナム戦争でロシアンルーレットが行われたという証拠はない、ベトコンのロシアンルーレットと捕虜の使用は、非現実的であると批判した。
対して、監督チミノはシンガポールのニュースで、戦争中ロシアン・ルーレットが行われたという記事があったと主張していますが、そのニュースは確認できていないようです。
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