ひろ

ディア・ハンターのひろのレビュー・感想・評価

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
5.0
監督マイケル・チミノ、主演ロバート・デ・ニーロによって製作された1978年のアメリカ映画

第51回アカデミー賞で作品賞、監督賞など、5部門を受賞した

この映画は単純な戦争映画とは違う。若者の青春と友情を描き、ベトナム戦争により心身共に深い傷を負った帰還兵を描くことにより、戦争の狂気と悲劇を描いた作品である。

183分の長尺だからこそ、細かい描写までたっぷり時間を使っている。前半で田舎の未来ある若者たちの青春と幸せをたっぷり描き、中盤でベトナムでの壮絶な戦争体験、後半にベトナム戦争の後遺症を描いている。前振りがしっかりしているから、後半の悲劇性が高まっている。

中でも、戦場でのロシアンルーレットのシーンは、映画史に残る名シーンと言われるシーンだけど、このシーンの緊迫感と狂気性はすさまじい。

マイケル役のロバート・デ・ニーロは、強い心を持った若者を演じている。軍服といい強い男はデ・ニーロにハマっていたが、ハマり過ぎてて物足りないという他の俳優じゃ抱かない思いが湧いた。この人はこの若さでもう完成されてたね。

ニック役のクリストファー・ウォーケン。明るかった青年が戦争により別人のようになってしまう。アカデミー賞助演男優賞を受賞した鬼気迫る演技は衝撃的。今でも個性を放つ俳優だけど、若いクリストファー・ウォーケンもなかなか魅力的。

ニックの婚約者であり、マイケルも好意を寄せるリンダを演じたのはメリル・ストリープ。まだスクリーンデビューしたばかりにも関わらず、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたのはさすが。現代最高の男優と言われるデ・ニーロと現代最高の女優と言われるメリル・ストリープの初共演も見所だね。

マイケルたちの友人スタンリー役のジョン・カザールは、撮影前に癌が発覚した。彼を降板させようとした制作会社に、監督とデ・ニーロが抗議したことで出演し、撮影終了後に亡くなった。この作品で知り合ったメリル・ストリープと婚約をしていた。出演5作品が全てアカデミー賞作品賞にノミネートされ、3作品が受賞した。

マイケル・チミノ監督は、監督賞を受賞したのに、次の作品で大ごけしたことでハリウッドから干されてしまった。監督賞受賞しても、1度の失敗で干されてしまうハリウッドって怖い

この作品は歴史に残る名作とはいえ、ベトナム戦争の正当化などと批判の声もある作品。あくまでアメリカ視点のベトナム戦争を描いた作品だから、観る人が真に受け過ぎないようにするのが大事だと思う。誰もが正しいと思える戦争像なんかこの世界には存在しない。とりあえず、自分の目で確かめてもらいたい。
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