いずみたつや

ディア・ハンターのいずみたつやのネタバレレビュー・内容・結末

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

4Kデジタル修復版が公開されたので、数年ぶりに鑑賞しました。

改めて観ると、なんだこの奇妙なバランスの映画は!と以前より一層感じました。

前半はとにかく飲んで踊って歌って飲んで。仲間の結婚式と出征の壮行会を兼ねた町ぐるみのパーティーがひたすら描かれます。

鹿狩りへ向かう道中、立ちションをする仲間を置いて車を発進させ、戻ってきたと思ったらまた発進、というくだらないやりとりを1カットで見せるなど、尺の使い方が本当に贅沢です。

それ故に自分もあの悪友たちの一員のような気持ちになるし、物語が恐ろしい後半に突入すると、彼らと過ごしたくだらない時間こそが最高に幸せだった…と気づかされる非常に残酷な構成になっています。

これまでの鑑賞では、やはりショッキングな後半部分が印象に残りましたが、今回はこの前半の複雑な内面描写の数々に驚きました。

同性愛を描いているとの指摘もある本作ですが、名曲『Can't Take My Eyes Off You』の歌詞が示唆するもの、ダンス会場での巧妙に仕掛けられた視線のやりとりなど、もの凄く緻密で繊細な演出がいたるところにあって目が離せませんでした。

そこに加わるのが男臭いロバート・デ・ニーロのかっこよさ、クリストファー・ウォーケンの美しさと狂気。

ジョン・カザールら仲間たちのキャラクターも良いし(僕はジョージ・ズンザ演じるジョンが大好きです)、メリル・ストリープはとにかく可愛いです。

また、ロシア系移民の主人公たちがソ連との代理戦争であるベトナム戦争に駆り出されていく、という側面も忘れてはなりません。

最後に歌う弔いの『God Bless America』は痛烈な皮肉です。自分の国であるアメリカへの一方的な愛を嘆く悲劇の物語でもあるのです。