みてべいびー

ディア・ハンターのみてべいびーのレビュー・感想・評価

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
4.7
壮大な映画。非の打ちどころがない。彼らの地元ピッツバーグの自然が雄大で、それとは対照的なサイゴンのネオン街の雑多さが際立つ。捕虜になってる時の狂気に満ちたロシアンルーレットは、自分が今まで観てきた映画の中でダントツに緊迫した場面だった。引き金を引くたびに自分ではなかった安堵と、次はいつ来るのかという恐怖と、高ぶる興奮とが見え隠れして笑顔さえも恐ろしい。あんなに自分がいつ死ぬかもわからない運任せの状況で、命がけの駆け引きを仕掛けるDe Niroの生への執念がすごい、到底真似できない。一方、生き残ったのに生への罪悪感を拭えないChristopher Walkenは、ロシアンルーレット賭博に身を投じることで、生きていることへの実感と贖罪に取り憑かれ自分を見失っていく。死ななきゃ帰れない、みたいな気持ちを抱かせる戦争の罪。最後彼が一瞬自分を取り戻す場面が残酷だった。ベトナム人が戦時中ロシアンルーレットをしてたなんて史実はないけど、あの狂った状況を現実よりも遥かに現実らしく構築したCimino監督の手腕が素晴らしすぎる。
そしてパーティーでDe NiroがMeryl Streepを見つめる眼差し。あれだけ言葉のいらないシーンを私は初めて観た、胸に刺さった。お互いの思いを知ってるからこそ、彼に彼女と二人きりの時間をあげるWalkenの優しさが哀しい。そのあと酔っ払って服脱ぎながら走り出す場面が本当に美しくて好きだった。帰還後、彼女が働くスーパーに行くところもDe Niroの健気さが見えて良い。
実生活で付き合ってたMerylとJohn Cazaleの絡みも切ない。当時Cazaleは末期癌で撮影に支障を来す可能性を考えて降板を危ぶまれていたけど、MerylやDe Niro、Cimino監督が制作側を説得して彼の出るシーンを最初に撮影したという逸話も。実際彼は映画の公開を待たずして亡くなってしまった。
こんなすごい映画、今じゃもう作れないのかな。
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