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ノッティングヒルの恋人のlamphuのネタバレレビュー・内容・結末

ノッティングヒルの恋人(1999年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

売れない旅行書専門店の店主ウィリアムとハリウッド女優アナの素朴な恋愛を描く名作だ。

生まれも生きている世界も全く異なる仲に愛は成立するのかという、命題が貫かれているように思えた。

象徴的なシーンは、やはりブラウニーのシーンだろう。ウィリアムの妹の誕生日パーティーで、一番惨めな者にブラウニーをあげる。そのために、参加者それぞれが、自分がいかに惨めかをアピールし合う。売れない書店、多忙極めるセールスマン、身体障害者、そんな妻を支える夫(手料理は世界一ひどい味)、そして誰もが憧れるハリウッド女優。性格も職業も社会的地位もバラバラな登場人物たちが、自身の心のうちに秘めた葛藤を静かに曝け出す。

全く異なる他者どうしであっても、その葛藤というレベルで通じるものがある。それを強く前に出した映画である点に、ただのラヴロマンス以上の価値があるようだ。

それにしても、理性的なヴェールに包まれたアナとイギリスらしいウィットやユーモアに富んだウィリアムという、人物造形が素晴らしい。そしてこの映画が四半世紀前のものになりつつあることに今更驚愕している。
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