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三銃士のBaadのレビュー・感想・評価

三銃士(1948年製作の映画)
2.5
演出がジョージ・シドニーということで、あまり期待せずに見ましたが、期待した下限をぎりぎりクリアしている程度のそこそこの作品でした。(私が見た範囲では、ジョージ・シドニーの映画が安定してくるのは50年代に入ってからのような気がします。)

ダグラス・フェアバンクスの線を狙ったかと思われるアクションは、ジーン・ケリーに関しては近い線に到達しているような気がして見応えがありましたが、演出のつながりとかテンポは御本家の方が面白かったのでは?数年前に見たフェアバンクスのゾロの方がサイレントながら遥かにキレもテンポも良かったです。ジーン・ケリーは『錨を上げて』でもゾロの扮装でアクションをするシーンがあったので、フェアバンクスをリスペクトしていたのかもしれませんね。

ジーン・ケリー以外ではアトス役のヴァン・ヘフリンがよかったのですが、あとはだんごになってチャンバラをしているような感じで、様式美が感じられずつまらなかったです。それでも、男性のキャストはそれなりだったのですが、女優のキャスティングは”酷い”です。ジューン・アリソンは単純にミスキャストというだけですが(『錨を上げて』のグレイソンのほうがこの役には合っていると思いましたが、ミュージカルにしか出ないのかしら?)、ラナ・ターナーは若い頃は十人並みの美人女優でしかなかったのでしょうか?十年後だったら充分に演じきれた役だとは思いましたが、この作品では雰囲気は合っていたものの、生彩を欠いていました。

それから、特筆すべきはなんといってもアン王妃を演じるアンジェラ・ランズベリー。レスターの2部作ではジェラルディン・チャップリンが演じていて、露骨に◯クシャに映してあって見るたびに笑いをこらえるのに苦労するのですが、それはこの作品へのオマージュだったのかと変なところで納得してしまいました(笑)。チャップリンは他の映画ではあそこまでファニーフェイスではありませんし(笑)。まともに役になじんでいたのは、侍女のキティぐらい(苦笑)。

衣装・美術・時代考証に関しては、それなりに予算をかけて時代考証してあったらしいレスターのものを見た後だと、予算が無くてももうちょっと何とかならないのか?とあきれてしまうような出来。甘めに見ても、ロケシーンとセットの部分のスケール感のンバランスや、ダルタニアンが出発する部分等の屋外セットでの撮影部分で映画全体の遠近法や縮尺が狂っている感じがなんともいただけませんでした。

よく知られている物語なので、どこをはずしてどこを入れるかは大切な部分かと思いますし、物語部分でアトスを中心に据えたのは正解かと思いましたが、中途半端に欲張ってリアリズム的な部分を入れてしまったため、ぼんやりとまとまりのない作品になってしまった気がします。いっそミュージカル仕立てにした方が、海外ロケが困難、MGM製作という悪(?)条件をカバーできたかも知れないと思いました。

( D・フェアバンクスの『三銃士』が見たくなった 2011/10/6記)
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