クマヒロ

魔女の宅急便のクマヒロのレビュー・感想・評価

魔女の宅急便(1989年製作の映画)
4.1
『宮崎駿が描く少女成長譚』

宮崎駿監督作品にしては珍しく、1人の少女が成長していくことのみにスポットを当てた本作『魔女の宅急便』

パッケージはファンタジー作品だが、フタを開けてみると13歳の少女が親元を離れ、壁を乗り越えていく成長譚。
世の中は優しい人ばかりではないこと、人生には挫折があること等、旅立たなければ理解できなかったことの数々は極めて現実的。周りからの刺激がキキを大人にしていく。

キキが子供ながらにできていたことは人との繋がりを大切にすること。それだけでいいのだと気付かされ、素直に生きていく勇気を与えてくれる。それまでの宮崎駿作品『天空の城ラピュタ』『風の谷のナウシカ』等に比べると規模が小さい物語でありながら、心に残る作品である。

風や太陽、雨の表現が多彩で自然の喜びを感じさせてくれるのも流石、宮崎駿監督作品。あたたかい世界観を彩るユーミンさんの曲も作品にマッチしている。

帰る場所がある暖かさをパン屋の看板一つで感じさせたり、キキの疎外感を影を用いて表現したり、この辺りも巧妙である。
何より、ジジの声が聞こえなくなることは独り立ちしたジジの嬉しくも寂しい感情を思わせ、作品のテーマにも奥行きを持たせている。
クマヒロ

クマヒロ