ぺろ

大阪の宿のぺろのレビュー・感想・評価

大阪の宿(1954年製作の映画)
3.9
神保町シアターにて。休みが取れたので土曜初回の上映で見てきた。五所平之助はまだ全然見ていないので、どれにあたっても未見だし…と何をやってるのかはちゃんと調べずに足を運んで、とりあえず見た「大阪の宿」これがすごかった…

東京でのやらかしで大阪へ左遷されてきた佐野周二が、下宿替わりに居ついた宿「酔月壮」で出会う個性豊かな女たち…どう見ても人情コメディのような筋書きだけど、お出しされるものが全く別の何か。女たちの人生は陰惨とさえいえる救いのなさに彩られており、めちゃくちゃキツい……「不幸を笑いあえる仲間」となった大阪の人たちと佐野周二、カラッと笑い飛ばして逞しく生きていくのではなく、みな泣きそうな顔で笑っている。一方でどこか見た後にはスッとする…というか清涼感さえある印象を受ける不思議さ。

佐野周二の持っていた正義感の強さ、人を信じたいという気持ちは理想主義的なのだけれど、それが通用しない世知辛さに接することで打ち砕かれるのではなく、諦念と混ざり合いながら、もっとどこか地に足のついた希望のようなものに変化していく。しょうもない映画評でよく言われる「人間が描けている」ってのがあるけど、描けてるってこういうことを言うのだろう。映画を構成するすべての要素のレベルが非常に高いが、特に俳優全員素晴らしいパフォーマンスでした。2時間もあるとは思えない、アッという間でした。
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