健一

魅せられての健一のレビュー・感想・評価

魅せられて(1996年製作の映画)
3.0
「魅せられて」を見せられて・・・

ベルトルッチ監督の1996年の作品。
昔からずっと見たかった作品を今回初鑑賞。
劇場公開時鑑賞 したかったのだが当時なんか恥ずかしくて劇場に行く勇気が無かった。
なんかジャケがエッチそうで・・・

のちの2年後に「アルマゲドン」で日本でも大ブレイクしたエアロスミスのスティーブン・タイラーの娘ことリヴ・タイラーの恐らく初主演作。
本作でベルトルッチの新たなミューズになるかと思っていたが 結局この一作で終わってしまったみたいで。
役柄の設定は19歳、実年齢は18歳。ピチピチのリヴ・タイラーが堪能できる作品。
「ラスト・タンゴ・イン・パリ」を彷彿とさせる映画です。

自殺した母の最後に書き記(しる)した『詩』を頼りにルーシーは出生の謎を解くためイタリアのトスカーナを訪れる。
彫刻家の家庭の家に滞在することになったルーシーは初恋の相手と再会するが 彼には既に別の相手が。
ルーシーは隣の部屋に住む 末期の白血病患者のアレックスに悩みを打ち明ける。
避暑地でのひと夏の出来事。少女は女性へと成長していく。

レイチェル・ワイズが出ていてビックリ! 出演しているなんて全然知らなかった。
スティーブン・タイラーはこの映画を観てどう感じたのだろうか?
私に娘がいて娘がこの映画に出演していたら素直に喜べるだろうか。

キーワードは母の『死』と『詩』。
生前の母が想いを寄せた人物を探したり 少女も自ら『詩』を作成し母の想いに近付こうと物語は進むのだが、そんな事よりリヴ・タイラーがこの後どうなってしまうのか? ばかりが気になってしまうので本来の軸がブレブレなのが、ややもったいない。

「ラストエンペラー」「シェルタリング スカイ」「リトル・ブッダ」の東洋3部作を経て 15年ぶりに故郷であるイタリアに戻って製作したのが本作。
久々にベルトルッチ節 が戻ってきたような感じなのだろうか。
彼の初期作品を観てなくて いきなり本作を観ていたら恐らく死ぬ程 退屈な作品と感じただろう。
ビデオカメラ、ケータイ電話、パソコン等(当時としては)最新のものも取り入れ あの独特なベルトルッチワールドを蘇らせている事に成功している。
とは言え 時は流れ 既に世紀末。
監督がイタリア不在の間、彼を敬愛する若手監督が どんどん増え 彼の作風を真似るような作品が世界中で量産されていたこの時代。
『少女のひと夏の恋』というジャンルは既に 出尽くした感 がある時期での公開だったので 批評 興行的にはかなり厳しい結果となってしまった。
今の時代(1996年)に私の作風は観客に受け入れられない。恐らく監督も痛感しただろう。
本作のリヴ・タイラーの素人っぽい演技、初々しさ、官能の世界に戸惑いながらも興味を示していく姿は なかなか頑張っていると思ったが、ちょっと作るには時代が遅過ぎた。

末期の白血病患者を演じたジェレミー・アイアンズが唯一キャストの中では群を抜いて存在感を示している。彼が登場すると キュっと作品自体が引き締まる。
ジェレミーとリヴの二人芝居だけが、いかにも映画的だ!
ジェレミー・アイアンズが主演した「ロリータ」のリメイク版と続けて見ると ひときわ堪能できるかも。

本作もそこそこ楽しませてくれたが、どちらかというとベルトルッチが本作の後に撮った「シャンドライの恋」のほうが断然オススメ.,.,かな。
健一

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