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魅せられてのkuuのレビュー・感想・評価

魅せられて(1996年製作の映画)
3.5
『魅せられて』
原題Stealing beauty.
製作年1996年。上映時間118分。

今作の製作を挟んで主演作が相ついで公開されたリブ・タイラー、なかでも一躍名を広めたイタリア・アメリカ・イギリス・フランス合作作品。
少女から女性への成長を遂げる姿をみずみずしく演じている。
(ルーシーが実の父親の正体を探ろうとするこのお話は、リヴ・タイラー自身の人生を映し出している。エアロスミスのスティーブン・タイラーが実の父ちゃんやと幼少期を通じて知らず、父ちゃんやと思っていたトッド・ラングレンに育てられ、8歳のときにスティーブン・タイラーが自分の父ちゃんやと理解したと彼女はインタビューで語っている。)
ベルナルド・ベルトルッチにとっては、15年ぶりにイタリアを舞台にした作品。
また、今作で『恋に落ちたシェイクスピア』のジョセフ・ファインズがスクリーンデビューを飾っている。

19歳のルーシーは、自殺した母ちゃんの死をきっかけにイタリアのトスカーナにやってくる。
それは、実父を探す旅でもあった。

90年代の作品で、当時注目の若手タレント、リヴ・タイラーが初主演(やと思う)、彼女がこの役を演じることが、ある意味、彼女の能力の全てではないことが(この後彼女の作品を見て)効いているかな。
彼女の不器用さ、母ちゃんを失い、父ちゃんが誰なのか混乱する主人公の悲しみ、そしてまだ処女であるという少女的で過大評価されそうな難問は、いわば、もう既に経験ある彼女の能力に作用していた(あくまでも見聞でのことやけど)。
また、幸いにも、ジェレミー・アイアンズのように、映画の大半で寝たきりになっても、絶大な存在感とクールさを放つ俳優たち(彼がタイラーに云い寄るちゅう、愚かな小生が考えていた設定にはならないのが幸いっす)、
レイチェル・ワイズは、自己中心的なアメリカ人の夫が嘘つきで詐欺師のボケナスではないかと合理的に疑っている女性役を、彼女の初期の作品の1つであるかのように演じていた。
他にも、フランス人の老人を演じた人(名前を忘れた)は、自分の居場所に耐えられない変人老人を演じていて、素晴らしかった。
今作品がマイナーな作品に感じられるとすれば、前述したように、ベルトルック監督が脚本家とともにオリジナルのコンセプトをもとに製作しているため、映画の半分強を過ぎるまで、状況や登場人物にあまり深みを与えていないことかな。
今作品では、セックスに対して、やるか、やらないかという、彼より上位にあるべき態度をとっており、しばらくは浅く感じられる。
しかし、ある時点で何かが少しずつ開かれ、さらに少しずつ開かれ、その間、タイラーのルーシーが重要なことを意識するようになると、中心的な構想は大きなハードルではなく、より自然なものになり始める。
これと同様に、ベルトルッチは、現在の環境では異例ともいえるほど善き映画を作り上げ(彼は、オルタナティブ・ロックから古いR&B、クラシック、ジャズまで、音楽の選択を非常にうまく調和させている)、本当に素晴らしいシーンもいくつかある。
パーティーで振り付けをした奇妙なダンサーたちが登場するとこなんか、うっとりした。
監督のファンはもちろん、俳優陣のファンも要チェックやけど、いかんせん、軽い作品なんは否めない。
ドラマチックな緊張感がなく、19歳の少女の擬似的な青春が主軸となっている。
それはそれで面白く個人的には見れたかな。
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