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スプレンドールのmhのレビュー・感想・評価

スプレンドール(1989年製作の映画)
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イタリア、ノスタルジー、映画館の名前がタイトル、名画からの引用盛りだくさんと「ニューシネマパラダダイス」と同じ年に作られた、「ニューシネマパラダダイス」とコンセプトが酷似している映画。
先に公開したこちらが埋もれてしまった理由は、見ればいくつか思いつく。
・過去がモノクロは安易。
・モノクロとカラーの切り替え基準がよくわからん。
・チトー将軍のブロマイドを持っているというだけで、主人公が共産主義であることを示してたり、日本人には設定がやや難解。
・65歳のマルチェロマストロヤンニが、65歳のまま青年時代を演じるのは無理ある。
・連作短編タッチになってしまって、全編を貫く大きなストーリーがなかった。
などなど。
支配人、映写技師、テケツ(チケット売り場)の三人群像劇としたのは好印象。
アセテートフィルムのスプライシング作業(フィルム同士/片方のエマルジョン面を削ってセメントでくっつける一連の流れ)をちゃんと見せてくれたのは眼福だった。
ちなみにこのアセテートフィルムは「ニューシネマパラダダイス」に登場したセルロースフィルム(家が火事になりかけた&映画館が火事になった)とは別物で、こちらは自然発火しない。でも破断しやすい。(ちなみに現在のフィルム映写はポリエステルフィルム。破断しなくなったしもちろん発火しない)
引用される映画がバラエティーに富んでいるのも特筆すべきポイント。
「アメリカの夜」とか「プレイタイム」とか「野いちご」とか。戦争映画しか見てない俺でも半分くらいわかって楽しかった。
映写技師が子どもに聞かせていたのはビリーワイルダー「地獄の英雄」だね。翻訳者のひとがわかっているかどうか微妙な訳になってた。
ソ連映画特集のくだりも面白かったけど、そちらからの引用はなかった。著作権クリアが難しかったのかな?(この映画の公開当時はベルリンの壁はまだ崩壊してない。あと数ヶ月待つ必要がある)
いっぱつ殴らせろのくだり、解体工事のくだりがいまひとつ爽快じゃなかったのが残念だった。まー「ニューシネマパラダイス」がどうしてもチラついてしまうのがそもそもの不幸なんだけど。
映画館ものとしての価値は高いと思った。
面白かった。

余談。
町山さんが「ニューシネマパラダイス」駄作説を唱える理由が「(当時は)映写機一台でフィルム上映は不可能」というわけで、この映画はどうかと思って見てたけどこちらも一台きりでした。
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