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キンスキー、我が最愛の敵の湿疹のレビュー・感想・評価

キンスキー、我が最愛の敵(1999年製作の映画)
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(『アギーレ』撮影中のキンスキーは)自分が風景の一部に過ぎないことを理解していたが、それでもカメラの正面に立とうとした。『アギーレ』や『フィツカラルド』が、本当に大自然の中で起こったことに対して(彼が自己演出的に表明している自然への愛とは真逆の形で)キンスキーが反応して、ヘルツォークがそれを撮っているのだと知って、その素朴とまで言いたくなる作品の原動力に感動した。本来別の人が演じるはずだった『フィツカラルド』の教会の鐘をつくシーンを前案と比較して、キンスキーの動きの面白さに震えた。キンスキーがいかに自己偏愛的で、演出的で、病的で猛獣のようだったかを、岩場とか川辺とか変なロケーションで語り続けるヘルツォークが一番食わせもの感ある。キンスキーは自分が中心にいないと怒る狂人だから、他のスタッフが猛毒ヘビに噛まれて足を切断することになったとき、彼はずっと拗ねてたんだって楽しそうにエピソードトークするヘルツォークもイカれてるやんけ。一体この天才たちのせいでどれだけの人が迷惑を被ったんだろう。でも最後の、『フィツカラルド』か『アギーレ』のロケ地で、派手なアマゾンの蝶が自分にくっついて離れない映像を、カメラに向かって一生懸命見せようとしているキンスキーと、それをしっかりと撮るヘルツォークのことを思い、なんか泣きそうになってしまった。極悪だがこんなに素敵な共犯関係はない。
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