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拝啓総理大臣様のmhのレビュー・感想・評価

拝啓総理大臣様(1964年製作の映画)
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拝啓天皇陛下様シリーズのラストという形を取っているけど、実際は、この頃量産されていた喜劇映画のひとつ。
・実際は森崎東が脚本。
・関西弁の渥美清。
・やなやつやってる加藤嘉。
・健康センターに行われている軽演劇一座のくだり。
などなどレアな見どころが多いんだけど、面白くないがもったいない。拝啓天皇陛下様シリーズのセルフパロディにもなってなかった。
いつもの喜劇に「キクとイサム」風味をつけようとしてるのはわかるんだけどね。
デキにこだわる時間のないプログラムピクチャーで社会問題を扱うのは難しそうだ。
ただ、会話のテンポは素晴らしかった。「ばかやろう、二日酔いで仕事休んでたら、働く日なんてありゃしねぞ」みたいなセリフはなかなか書けない。
粗製乱造されている喜劇映画のなかにあっては光るものがあるんだけど、「拝啓天皇陛下様」と「続・拝啓天皇陛下様」の続きとして消化すると、レベルの低さが目立つのも事実。
「クロンボ」「キチガイ」「パン助」など、差別用語が出てくるだけならまだしも、「クロンボ」のときは実際に人種差別をしてるので、見てて辛くなってくるみたいなことにけっこう出くわす。
華々しいデビューとなるはずだった壺井文子はこれ一作だけとなってるのもわかる気がした。作中とはいえ、あれだけクロンボいわれたら萎縮してしまって当然だ。若い女性ならなおさらだ。
笑いも喜劇も素晴らしいけど、いっぽうで、弱者を指差すのもまた喜劇のいち形態なんだなぁと、寂しい気持ちになった。
鶴田浩二の福岡弁もヤバいけど、渥美清の関西弁もヤバかった。
見なくていいというより、これは見ないほうがいいやつでした。
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