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泥棒成金のnowstickのレビュー・感想・評価

泥棒成金(1954年製作の映画)
3.7
泥棒成金
タイトルの通り、ヒッチコック作品では珍しい泥棒物。

ヒッチコックの映画は多くの人が指摘する様に、物語にリアリティがない所が弱点だ。個人的には、刑事やミステリー物で、トリックの重要な部分にリアリティが無いと興醒めしてしまう。また、世界を股にかけたスパイ物とかだと、スパイ活動の実態を誰も知らない分、娯楽としての許容範囲はミステリー物よりも随分と広がるが、話の規模が大きすぎることが災いし、何か一つでも骨格となる部分がないと、全体として地に足のつかない映画が完成したりする。
ヒッチコックには、コナンドイルみたいに実際に冤罪事件を解決した経験や、イアンフレミングみたいに実際にスパイ活動をした経験が無い分、仕方がないのだろう。というか、そんな経験がある方が珍しいのだが。

そういった理由から個人的にはヒッチコックの王道の刑事物、スパイ物が肌に合わなかったりするのだが、泥棒物の本作は良かった。泥棒の実態を誰もあまり知らない分、自由なストーリーを描いてもさほど気にならないし、スパイ物ほど話が壮大でも無いから話もある程度リアリティがあるように思える。
ヒッチコックが本作以外に、ルパン三世的な泥棒物を撮らなかったのは残念だ。まあ、本作も純粋な泥棒物かと言われると、主人公が泥棒なだけで、どちらかと言うとミステリー作品に近いが。

ヒッチコックがたまに作る変化球作品としては面白かった。
また、「暗いミステリー作品に、テクニカラーのペンキをひっくり返した様な色合いは似合わない」と前々から思っていたのだが、本作の南仏を舞台にしたバカンスの雰囲気には、似合っていたと思う。
特段面白いって程でもないが、良い映画だと思う。
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