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私の20世紀のらのレビュー・感想・評価

私の20世紀(1989年製作の映画)
3.5
イルディコー・エニェディ、これが長編デビュー作というのはいろんな意味ですごい。まるでサイレント映画の名作のようなルックに夢のような物語展開で『心と体と』や『ストーリー・オブ・マイワイフ』と比べてももっと風変わりな作品だった。科学技術が目覚ましい発展を遂げ、"映画"という魔法が発明された19世紀末から20世紀初頭を自由で幻想的な筆致でとらえている。つまり、"映画"の映画でもあるのだが、ここには愛とノスタルジーだけでなく、人間が何を失い何を捨ててきたのかということへの眼差しがある。光の使い方が美しく、モノクロの画面にとても映えていた。アイリスインとアイリスアウトを繰り返す編集もキュートで、映像詩のような映画ながら肩肘張らずに観ることができる。
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