半兵衛

リトアニアへの旅の追憶の半兵衛のレビュー・感想・評価

リトアニアへの旅の追憶(1972年製作の映画)
4.3
他人の過去への郷愁、家族や友人への想い、かつて住んだ故郷への懐かしさと戦争の苦い思い出…。監督自身の久々にふるさとに帰還するというミニマムな個人体験を16ミリフィルムならでの質感と才気溢れる編集により自分自身がまるでその世界で生きているような不思議な感覚に。そして見終わったあと一人の人生を体感したような気分になり、ホームビデオなどにある郷愁の感覚を徹底的に突き詰め美しく作り上げた映像詩の世界がそこにはある。

母との再開の場面で時計の針が二人の高ぶる心臓の音のように鳴り響く場面の崇高な美しさは一生忘れないと思う。

でもそんなノスタルジックな美しさのなかに自分の体験を通して、今でも戦災で故郷を追われ難民として各地をさ迷う人たちがいることを取り上げる姿勢にグッと来る。

あと空港での母との別れの場面でお涙一辺倒にさせず、CAさんの脚ばかり眺めてしまいぼやくユーモアさも好き。ラストの「それで締める?」という終わりかたも私小説らしくて好み。
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