くわまんG

秋刀魚の味のくわまんGのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.0
あらすじ:我が子がずっと側にいるのは幸せだが、果たして我が子は幸せだろうか。

寡夫の父が、身の回りの世話をさせていた娘の嫁入りについて考えざるを得なくなる…といういつものお話。

『晩春』の頃と違って、娘は生意気を言うし、ましてや三つ指をつくことはない。それでも、独身の寂しさや恋が実らぬ辛さを噛み殺して、父の世話をしている。それで十分幸せと思っている。

一方で父は、娘の健気を知っていながら現状に甘えていたが、二十年後の未来を覗き知って心変わり。男は家事をしない時代、コンビニも弁当屋も無い時代、男所帯生活は超辛い。けれども、老兵の役割は若人の踏み台と己に言い聞かせ、娘の幸福を優先。

過去作品に比してやや淡白ではあるが、美しい小津調をカラーで堪能できる遺作。杉村春子、三宅邦子、岡田茉莉子が完璧に役をこなす中、岩下志麻だけ小津調に染まりきれないのも、時代の移り変わりを感じさせる。