こーた

秋刀魚の味のこーたのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.0
小津監督作品を観たさに鑑賞。
この時代の作品を観るとつい現代と比べたくなる。セリフの間の取り方や受け答え、やり取りが良くも悪くも芝居じみているのはこの時代の演技指導のためなのか、本当にこんな感じの喋り方だったのか。気になる。
何と言っても女性の描かれ方は印象的。「嫁に出す」という言葉は嫁に出してやる、というニュアンスも含んでいる。娘は家族の世話をするのが当たり前。嫁いでも専業主婦として家事に勤しむ。まだ女性の社会進出が進んでいない時代に、女性がどの様な役割を社会で担っていたのかが作中の様々な家庭から読み取れる。嫁ぐ前の女性は便利な存在として男たちに「使われている」様な印象を受けた。本作では無神経な父親と息子が、娘の路子の縁談を勝手に進めて勝手にダメだったと一方的に報告する。視聴者側からすると腹立たしい描写である。これがもし割とよくある話だったのであれば、当時の女性たちが不憫でならない。人生の主導権が自分にないと感じてしまう。
初老の父親は聡明な印象で、トリスバーで心地良く酔う姿がサマになっていた。ハットを被る姿は洒落ている。娘が嫁いだ夜はいつもより酩酊していた。心地良い気分と孤独のはじまりを実感する寂しい気持ちが両立して、哀愁漂うも人間味のある姿が胸を温かくする読後感となっていた。
当時の大卒初任給が14,000円前後?というのを考えると、2000円の価値ってけっこう高いよなあと思って観てました。
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