のんchan

秋刀魚の味ののんchanのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.8
この季節に観たいと思ってた🍂
やっと観れました。
小津安二郎監督、60歳の遺作。

古い邦画をデジタルリマスターでの美しい色合いで、そして私には有難い字幕で観れた充実感、本当にありがとうNETFLIX🌟

これは期待を遥かに超えました。哀愁漂うドラマでありながら、超コメディではないですか?会話が一々ツボりました🤣
『紀子三部作』よりこっちが好み💕

今作は特に、ヴィム・ヴェンダース、アキ・カウリスマキら小津安二郎をリスペクトする外国人監督が撮る作品とダブりました。彼らは意識して真似ていますからね。
1mmもブレのない完璧過ぎる構図、バランスの取れた色使い、映画作りの神様であり、映像の教科書だと納得します。

小津が一貫して描いて来た、妻を先に亡くした寡と嫁入り前の娘の関係。
笠智衆は娘を思う最高に優しい父親だが、嫁に出してしまい寂しさに堪える姿は、背中の寂寞が語るその黄昏具合いが切ない😢

24歳の長女役、岩下志麻の美しさ、そして気丈さ。この役に似合ってました。失恋した時の洋裁メジャーを指に絡ませるシーンは100回以上撮り直しているという小津の拘り。

長男は佐田啓二。やっぱり中井貴一とは違うイケメン。その嫁に岡田茉莉子。昭和30年代の仕事を持つしっかり者の女性らしくて良かった。

父親の学友たちとのブラックジョークにウケるウケる🤣
娘のような若い嫁と再婚した友人が飲む薬って...当時から精力剤はあったんだね。

元恩師は東野英治郎(笠智衆より3歳若いのに)が老け役をしている。味わいのある演技が素晴らしい👏
その娘役は小津作品になくてはならない杉村春子。誰にも出来ないあの可愛げのない行き遅れのキツイ表情よ。
その姿を見た友人が笠智衆に二の舞を踏むなと娘の結婚を促すわけなんだけど...

笠智衆の軍隊時代の部下に加東大介。行きつけのバーのママに岸田今日子。そこで歌う“軍艦マーチ"を3人で調子合わせるノリもイイ🎶

昭和30年代の結婚適齢期は24歳だったのか?それを過ぎると行き遅れ気味。娘を側に置いておきたい父親。娘も父親と弟の面倒を見なくてはという自らの使命感も...

私の父もよく飲んでた、だるまウイスキー、そして紺色の丸い缶のPeace🚬、昭和の家具に唐紙、鍵をかけない玄関...

岩下志麻の衣装は森英恵。小津は衣装の生地からブラウスの襟の形まで丁寧に検討を重ねたらしい。ボックスプリーツのスカートとかって母も履いてたな〜。

こんなにハマると思わなかった。多分、中途半端な時期や年齢で観ても良さが伝わらなかったかも。今の年齢で観たことで、戦後、敗戦を受け止め急成長して落ち着いた頃の日本。敗戦での日本人の本音と建前が伝わって来た。そこそこの安心感や女性の立ち位置なども理解出来る。
とにかく懐かしく感じる昭和時代が堪りませんでした。
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