このレビューはネタバレを含みます
"秋刀魚の味"が指すものの解釈によって本作の主題の肝となる部分も変わってくるだろう。それは温かい家庭の味なのか、はたまた娘を送り出した嬉し寂しい孤独の苦味なのか、脂が乗った若者どもの味なのか、、、。何はともあれ、秋刀魚に旬があるように、人生の節々にも適齢期がある。その曖昧かつ暗黙の了解の内に重大な適齢期の代表であった娘の嫁入りを中心に、親子の心理的駆け引きや様々な家族のかたちが描かれている。
笠智衆演じる能天気なお父さんはとても魅力溢れる主人公だが、出世した教え子たちに恭しく頭を下げ鱧も秋刀魚も滅多に食べられずクラス会でここぞとばかりにご飯をかきこむ先生が切なすぎる。
結婚式は葬式みたいなものなのか。
やはり孤独は嫌なものかな