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秋刀魚の味のmasayaanのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.0
遺作、か。カラーであることに戸惑いつつも、『晩春』の変奏曲を最後まで心地よく聴いた。技法的な部分は変わらないし、似たような気づきはここでは繰り返さない。妻に先立たれた片親と、その身を案じて結婚に踏み出せないしっかり者の娘、その別れ。繰り返しの題材だし、文字通り焼き直しの場面すら少なくない。

あえて、大学生の課題みたいなつまらない事を言うと、女性の社会進出を大いに反映しているなあと。見合いを勧められる娘はそれを自由恋愛と天秤にかける。あるいは、各家庭の妻たちは夫たちの母親役を決して引き受けはしない。いろいろな意味で「母親」の不在を描いている。むしろ、女たちが「母親」役を卒業していく映画とも言えるか。おっちゃんたちの科白は余白が増えてだいぶ洗練されている。
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