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愛のレッスンのBONのレビュー・感想・評価

愛のレッスン(1954年製作の映画)
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ベルイマン作品鑑賞29作目。ベルイマン作品の中では珍しく、軽快なタッチで描かれるコメディ映画。

結婚16年目を迎えるが夫デヴィッドの不倫で関係が破綻してしまったある夫婦。婦人科医の彼が、元恋人の元に行ってしまった妻マリアンヌを取り戻すために奔走する徹底された茶番劇。

新婚で2人とも若く、永遠の愛を疑うことなく幸せだった頃の記憶やフラッシュバック、夢のパートはベルイマンの妙味を存分に引き出していた。

関係が破綻してから列車で偶然居合わせた2人の口説き・口説かれの対話を繰り広げる壮大な茶番劇はウィットに富み、感情の爆発やいとも簡単に覆る愛など、結婚の呪縛という暗く深刻なテーマがあっけらかんとコメディチックに描かれ、社会の滑稽な不条理さを表していた。

「男は女の添えもの」「神は女に違いない」「女は歓喜と悪魔的な策略を同時に持つ」などの台詞から、ベルイマンが長年女性について精神科医のように探求してきたのが垣間見られ女性崇拝というか、フェミニズムまで感じた。

薄暗いバーでマリアンヌと見知らぬ娼婦が殴り合い、すし詰めになっていた人々が蜘蛛の子を散らすように逃げ、ベルイマンらしい美しいモノクロームと静寂に包まれた空間で、まだおたけびを上げて喧嘩するシーンは面白い演出だった。
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