Jimmy

愛のレッスンのJimmyのレビュー・感想・評価

愛のレッスン(1954年製作の映画)
5.0
冒頭のオルゴールを映しながら「この物語は悲劇になりそうな喜劇である」といったナレーションで始まり、何気なく観始めたら、芸術と娯楽を兼ね備えたイングマール・ベルイマン監督の傑作であった。

医者の診察室で、患者女性=ベラン夫人と別れ話をする医師ダビッドは、かなり自由な恋愛をしている様子。
まもなく車で出かけたダビッドは、ベラン夫人との出会いを回想する。

車が到着した駅で列車に飛び乗ったダビッドであるが、ここで「雨に濡れる列車の窓に、ダビッドの横顔が映り、外の流れる風景を描いたシーン」が素晴らしく綺麗である。
こうしたシーンを見られるので、ベルイマン監督作品を観続けてしまうのだ。

続いて、列車の中で子供2人の写真を見て、父子のエピソードを回想するダビッド。

娘は『不良少女モニカ』(本作の前年に製作)のハリエット・アンデション。
その弟もいる。

その後、ダビッドとその妻マリアンヌの男女の回想シーンで物語が、過去と現在を同時に描く見事さ。

妻マリアンヌも自由な恋愛をしているが、夫ダビッドに言う「私達が本当に幸せだったのは、子供たちが生まれる前の二人きりだった頃」というセリフが印象的。

「女は神だ」とか「死とは永遠の命を生きることだ」とかのセリフも、ベルイマン監督らしさが出ている。

映像面でも、家族でピクニックに行って、夫妻が見上げた木々の間から漏れる「太陽の光」は、この映画がつくられた1954年より前の黒澤明監督『羅生門』(1950年)の影響がモロに出たシーンである。

物語は楽しく、映像も綺麗で、セリフも秀逸。
ベルイマン監督の傑作✨
Jimmy

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