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エディット・ピアフ愛の讃歌のchsyのレビュー・感想・評価

4.9
Non, Rien de rien (…そう言いたい)

ピアフの伝記だけに、ストーリー自体が ドラマチックなのはもちろんだけれど、
さて、どのように描かれるのか・・・
評判通り、マリオン・コティアールの演 技力は期待を裏切らない。
それありきの作品の成功と言えるでしょ う。

幼少期の生活は悲惨極まりない。教育を受けることもなく、しつけもなく、
立ち振る舞いも話し方もひどいものだ。
その彼女がひとたび歌を口ずさむと、一 気に聴く人の心を掴む。
天才が生まれる瞬間は痛快だ。
そして導いてくれる人達との出会い。
それはまるで、運よく力のある人に出会 えたかのように見えるが、
才能の持ち主には人を呼び寄せる磁力が ある。

マレーネ・ディートリッヒがショウの後 に近づいてきて、
ピアフと言葉を交わすシーンが印象的。
「歌を聴いてしばし、私の心はパリへ旅 をしました。
あなたの歌にはパリの魂がある」
当時憧れの完璧な女性から心からの賛 辞。

しかし、生育歴による生活習慣の悪さは 生涯変わることがない。
故に49歳で早世。歳を重ねるごとに円 熟味を増し、
歌で深く人生を語れるようになっていた ことを思うと残念だ。

ラストシーン、Non, je ne regrette rien の力限りの熱唱は圧巻。
何度も繰り返し観て、聴きたくなる。
邦題「水にながして」は直訳からは遠い が、彼女の人生を物語って意味深い。
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