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バーバー吉野のTSのレビュー・感想・評価

バーバー吉野(2003年製作の映画)
3.1
【押し付ける伝統】71点
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監督:萩上直子
製作国:日本
ジャンル:コメディ
収録時間:96分
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町の男の子たちはみんな「吉野がり」という髪型をしていて、そこに自由な髪型をしている転校生がくるという話。大学生の時に映画論の講義に潜り込んだのですが、その時に紹介されていたのを覚えています。U-NEXTで配信されたのでやっと見れました。ほのぼのとしたコメディ映画なのですが、髪型は表現の自由とし、髪型を強制するのは人権侵害であるというややシビアな要素も兼ね備えています。

とある田舎町では、男の子たちはみな「バーバー吉野」という床屋で吉野がりという髪型をさせられていた。それはこな田舎町に伝わる伝統に関わるもので、みな疑問もなくその髪型をしていたのだが。。

これこそ、客観的な視野が大事だという証拠でもあります。転校生の坂上くんはいわば普通の、オシャレな髪型。そこに難癖つけてくるのはもたいまさこ演じる吉野のおばちゃん、だけと思いきやこの町の大人全体が難癖をつけてきます。この伝統的な髪型がいまや時代にそぐわないものということを誰一人疑わないのが「伝統」という代物の厄介なところ。伝統というものは良い要素と悪い要素を兼ね備えている諸刃の剣のようなもので、継承すれば自由が失われる、捨てれば歴史が消滅するというものであります。しかし、今回の吉野がりに関しては、何故伝統的なのかを聞いたところでインパクトに欠ける。大人がそうしなさいと言ってきたから子どもたちは何も違和感を感じなかったですが、坂上くんが必死にこの髪型にするのに抵抗していたのを主人公たちは見て、はじめて自分たちの気持ちを外に出していくのです。

大人がしていることが全て正しいわけではない、ということを伝えている作品だと思いますがそこまで過激ではなく、やわらかくそれを伝えています。確かに髪型まで強制するのは全体主義的な要素を感じ取れ、とてもじゃないですが、このご時世でそれは無理でしょう。と、なれば髪の色も自由だと唱えてくる子どもも出てくるかもしれませんで、学校の教師としては苦いところなのですが、個人的には、髪の色なんかで個人を判断するのでなく、個人の能力や姿勢で判断、評価できる世の中になれば良いなと思ったりします。
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