Moomin

蟻の兵隊のMoominのレビュー・感想・評価

蟻の兵隊(2005年製作の映画)
5.0
かなりおもしろいというか凄かった
「日本軍山西省問題」聞いたこともなかった
1945年 戦後 中国に残された日本兵達 彼等は上官の命令の元、敗戦してもなお武器を下ろさず中国の内戦で戦い続けた 一体この問題をどれだけの人が認知しているのだろうか それは冒頭の靖国神社での若者へのインタビューで垣間見える
この作品の主人公 上記に該当する奥村和一さん 彼はこの問題を生涯をかけて解決しようとしていた それは奥村さん達中国に生き残った者達の戦後保証がないことがきっかけだ その当時の日本国の言い分は
「彼等(山西省残留兵)は、彼等の意思で残った」なんとも身勝手な見解によって彼等は中国で戦いたくさんの犠牲者を出した それに日本に帰ってきても保証がない…
彼等の歳はこの作品時80〜90代 このまま問題を蔑ろにされて終わってしまうのだろうか… そういった面でこの問題に向き合った池谷監督を尊敬する

 物語は奥村さんの活動(裁判の為の)や、この撮影を機に中国までも飛ぶ かつて日本軍が占領していた地域・人々 そして彼が初めて人間を殺した場所にも。
殺したと表現したが こういう戦争物の映画を見ると、戦時中の人殺しは全く意味が違かったりもするよなって思う 当時の環境・社会が人間に及ぼすものがどれだけ卑劣であったか どれだけ外道であったかを確認するためのニュンベルク裁判や東京裁判であったのだろう それは1つの事象であって、確かに細かく見ていけば非人道的な行為も未だに問題視されているが当時の状況を踏まえた上では100%の悪にはなり得ないのだろう
しかし、この作品はただの戦争物ではなく、主人公である奥村さん本人が人を殺めた経験があること そして中国内での日本軍による虐殺も証言によって浮き出て来る
「一向に政府が裁判する気のない山西省残留問題」に加えて「戦時中の日本軍による虐殺行為」がこの作品を描き出していく
そしてその答えが怒りと悲しみの奥村さんのパッケージの顔なのがまた良きです

∴雑談
 ラストシーンの靖国神社は見もの 戦争帰還者の英雄である小野田さんと対立する奥村さん あんな対立もあるのか…
 登場人物各々が自分が過去に行った行為を振り返る瞬間 言葉に詰まる瞬間 この作品にはいくつも健在する
 奥村さんが処刑場に行ったシーンは凄い 帽子を取って線香を上げ頭を下げたシーン 戦争下の悲しい現実が垣間見えて苦しくなった
 奥村さんが奥さんに言えてないこと… それを中国の被害者の方に会って助言されること なんかもの凄い複雑だけどもの凄い力を感じたシーン
 靖国神社についてだが、あんなもん行くか!!って人もいるもんで戦争って本当に難しい
Moomin

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