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蟻の兵隊のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

蟻の兵隊(2005年製作の映画)
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1945年日本はアメリカには負けたが、まだ中国には負けていないと、国民党とともに日本軍として共産党と戦うために、中国山西省に残された日本兵2600人。その内戦で500余名が亡くなり、1949年に帰国。軍司令官の命令で戦ったが、逃亡兵扱いとなり、戦後補償を受けられなかった。裁判では認められず、自主的に残留したことになった。戦争終結後に日本軍として戦っていたことを認めるとポツダム宣言違反となる。再び上告は棄却された。

その中心となる人物、奥村氏が真実を探す旅である。軍司令官が国民党の軍人と交わした日本兵を残留させる密約の証拠を映像記録に残していこうとする。軍司令官は日本兵を置いて帰国した。密約は日本兵を傭兵として提供する代わりに自分の安全を担保し、安全に出国することと言われていた。

少年兵だった奥村氏は度胸試しで少年兵の訓練の一環で中国人を殺させられた。それを妻にも話したことはなかった。中国で取材する中で、日本兵たちから暴力を受け、父親からは日本兵に売られそうになった女性が、奥村氏に「その話はもう奥さんに話せるでしょう。あなたの責任ではない。」と言うと、奥村氏の顔が「赦された」表情に変わっていった。

行く先々での中国人との会話で、日本兵がその地で何をしたかが明らかになっていく。日本兵の手記も残されていた。密約の証拠も。

帰国しても、その密約を知っている唯一の生存者は口を開かない。

奥村氏は言う。
「地獄をみた人は忘れるしかない。私はまだ地獄を知らなかったんだ。だから何があったのかを知りたいし、残さないとならない。時間との戦いだ」

精力的に活動する奥村氏は、靖国神社境内で右翼の集会で演説する小野田寛郎氏に質問し、罵倒される。

質問は「侵略戦争を美化していいのか?」

二十歳の少年兵の見た戦争と陸軍中野学校出身の身分を隠した兵がみた戦争は、なぜそうも違うのだろうか?

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