市川崑って、こんな作風も撮ってるんだ…
そんなふうに初めて観た人は誰しも思ってしまうであろう、かなり毒の効いた、ブラックコメディ。
「この人が精神を病んでしまうのか!… と思ったらこの人もか! いや、え、誰が正常なの…!?」となってしまうディストピア感。
でもそれって、『シャッターアイランド』的と言うよりは、この現代においても、どこの国であろうとあり得るという事実が一番恐ろしい。
「ワーカホリック…それによってこんな優秀な人があちら側の世界にいってしまうなんて…」と思っていたら、いつのまにか私自身も。…みたいな。
また笠智衆と杉村春子の二人が主人公・民雄の両親を演じているというのも面白い。
小津作品ではなかなか見られないサイコティックな役柄を怪演。
市川崑による、マジックリアリズム的世界と、現代に繋がる病的世界の、ハイブリッド作品。