教授

満員電車の教授のレビュー・感想・評価

満員電車(1957年製作の映画)
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平たく言えば「人は何のために生きるのか?」ということ。
映画に関する評価とは別に、鑑賞中に考えていたことはつまり、そういうことだ。

本人は至って真面目に、そして彼なりのリアリズムを持って現実をサバイブしていくための処世術として諦念を持ちながら、滲み出る人間性によって次第に精神を病んでいく、というよりは今時の言葉で言うところの「闇落ち」していく川口浩。

狂っているのは父か、母か、自分か。
不安定な描写や、まるで「機械じかけ」の工場での労働、社員寮。
登場する人物は悉く心を病んでいく。
何より全ての人物たちに覇気がまったくない。

タイトルにある「満員電車」はほぼワンシーンくらいしか出てこない。
しかし、あらゆる場所がすし詰め状態。
世界そのものが満員電車に揺られているようだ。

というように、ここまで書き述べた要素をとにかくスピード感のある会話劇として、川口浩の虚無感や、笠智衆、杉村春子の演技バランス、といった演技面。

そして洋画的な画面構成とカット割り。編集のテンポ感と、まさに映像表現と演劇的バランスをマッチングさせた「まさに映画」でしか表現できない世界観。

それはつまりシュールで、リアルな悪夢ということ。
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