半兵衛

カメレオンマンの半兵衛のレビュー・感想・評価

カメレオンマン(1983年製作の映画)
3.2
「泥棒野郎」を更に発展させ、大風呂敷を広げた作品。とはいえ「コンプレックスにまみれた自分を消去し他人になりたい」という江戸川乱歩のような願望とその悲哀が強くなっているので笑いどころは少なくなっているのが難、そしてユダヤ人(ウディ・アレン本人もそう)であるはずの主人公の隠れた願い「大衆の中の一般人として生きたい」がナチスの全体主義によって叶えられるというブラックジョークは毒が強すぎて見てるこっちが苦しくなる。

とはいえ過去の映像とウディ・アレンの演技を違和感なく差し込む技術はデビュー作から進化し、何の違和感もなく本当のドキュメンタリーを鑑賞している気分になれるのは凄いと思う。そのピークがヒトラーの演説の最中にウディ・アレンが好きな女性に気づいて手を振るシーンで、ヒトラーや廻りの人のリアクションなど全く違和感がないため何の知識もない人に見せると本物の映像と錯覚してしまいそう。
半兵衛

半兵衛