猫脳髄

カメレオンマンの猫脳髄のレビュー・感想・評価

カメレオンマン(1983年製作の映画)
4.6
ウディの最高傑作のひとつと言っていいだろう。ウディ演じる他人に合わせてすぐに変身してしまう男Zeligは、今や代名詞として辞書に登録されている。

戦間期に突如現れ、メディアを大騒ぎさせた謎のカメレオン男のドキュメンタリーという体裁で、当時の映像・画像との合成や擬古的な撮影方法による再現などに、関係者(いきなりスーザン・ソンタグやアーヴィング・ハウらが登場)へのインタビューを交える。映画内映画のシーンも凝っている。ミア・ファローがウディの主治医として登場し、治療を試みる様子も丹念にたどる。

「同調圧力」や「空気」におびえ、安全でいるため、不安にならないようにするため誰でもZeligのような病を抱えている。そんな個人的な不安を映し出しつつ、政治的テーマを滅多に取り上げないウディが、個人の不安が最終的にナチス(全体主義)への迎合につながることを鋭く言い当てている。

全編モノクロームで笑いも多くはないが、大きなインパクトを残す名作である(32/50)。
猫脳髄

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