和桜

ペパーミント・キャンディーの和桜のレビュー・感想・評価

4.1
ある男の人生を遡っていく列車。
人生を時系列順に見ていけば、様々な変化はあれど一人の人間の同一性は保たれているように見える。
だけどこれを逆から見ると、時間が飛ぶ毎に別人とも思える性格や姿が現れてくる。7つの年代を遡る毎に別々の点は繋がって行き、最後にその人間の本質に辿りついたような、愛おしさとも言える感情が流れ込んできた。
そしてその分だけ、何故こうなってしまったのかとどうしようもなさに押し潰されそうになる。

光州事件を背景に兵役や行政機関の腐敗、男尊女卑。この映画もまた韓国映画が未だ向き合い続けている自分達の歴史を映したもの。
ただし、一人の人間がその事件や歴史に巻き込まれる前後を描き、それを巻き戻していくことでその不条理さは増しているように思う。迫り来る列車に向かって『戻りたい!』と叫ぶ、やり直しを乞う序盤の悔恨の言葉が過去へ向かって幾度となく響き渡る。
和桜

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