せいか

ソイレント・グリーンのせいかのネタバレレビュー・内容・結末

ソイレント・グリーン(1973年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

8/7、Amazonビデオにてレンタルして視聴。
全体的にシナリオの粗とでもいうのか物足りなさが目立つけれど、放映当時の70年代頃に問題視されていた環境問題から主に着想を得たのだろう風刺作品であるので、細かいこと考えずにガリバーあたりでも読むときみたいな気持ちで観るものなのだろう。

シナリオは、食糧問題を中心に限界化した社会が極端な格差社会を営んでいて、主人公の警官がある事件を追っているうちに現状、たぶんファシズム的な権力さえ持っている(と言うにはかなりこのへんの社会設定は緩いが、取り敢えず権力は持っているらしい)食品系の大企業の闇を探り当ててしまうというもの。
ラストの以下のセリフに大体全て詰まっている。
Soylent Green is made out of people.
They're making our food out of people.
Next thing. They'll be breeding us like cattle for food.
You've gotta tell them. You've gotta tell them.
(…)
You tell everybody.
Listen to me. Hatcher. You've gotta tell them!
Soylent Green is people!
We've gotta stop them somehow!
ソイレント・グリーンとは緑色のタブレットのような加工食品で、他にもカラーはあるのだけれど、たぶんこの緑は肉の代替物のポジションなのだろう。もっと話の本筋であるこのタブレットが生まれる過程のグロテスクなところに時間を割くのかと思っていたけれど、このへんはかなり淡々としている。姥捨て山システムが機能していたりもする(割に社会はそれに対して醜さを見せないので、強制的に死を選ばされている感じはなくて、やはりここにもあまり悲壮感がないのだけれど)。作中のデモで加工物とはいえ食品は大事だろうに無茶苦茶にされていたりとかもなかなか謎でもある。
ラストなんかも主人公は暗殺されて、健康な若い人間の肉を実は家畜の精肉として流通させてたエンドでもあるのかなと思っていたけれど、そんなことはなかった。
作中、画面のほとんどが緑のフィルターがかかったようになっているのだけれど、その不衛生さがなかなか面白かった。

上層社会では若い女性がその豪邸の家具として飼われていたりもして、主人公はなかなか好き勝手に振る舞ってロマンスを演じたりもするのだけど、このへんの尺なんかも話の中途半端さに加わっていた気はする。この時代の映画的にも欠かせないのやらSFあるあるではあるけど、それにしても中途半端感。

救貧院状態でごったがえしている教会のシーンも神父だか牧師だかのあの虚ろになって狂っている感じも印象深くはあるのだけれど(懺悔室でのあの、殺される前から既に死んでいるような顔よ)、深いところに届かないままやはり次に行く感じでもどかしさはある。

あと、私はリスニング力がないに等しいのだけれど、とはいえ中盤の字幕の言い回しが気になった。主人公が暗殺業もやってた護衛に詰め寄るシーン。原文だと以下。
Life in a waste disposal plant in a Soylent factory someplace.
How about that big. Fat Soylent Corporation?
Do you work for them like Simonson did?
How much did they pay you for that one?
Does Soylent buy your strawberries?
結構、意味が通ればいいという言い換えが目立っていたのでさすがに気になった。字幕翻訳の都合も分かるけれど、元の言い回しのほうが好きでもある。

何にせよ、本作のプッシュポイントは、このままだと人類は自分たちのツケを払う形でこういう社会を招くことになりますよであるとか、なんなら現在にしてもすでに人の肉を食い潰し合うような、一方的に蹂躙するような社会になっていませんかというものなのだろう。
前半で、かつても人間は醜いものだったが、少なくとも地球は美しいものだったというセリフが特に印象深い。

余談ながら、ラストの、救貧院で殺し合いの追いかけっこするくだりに何かを思い出しそうなのだけど、他の作品でもこんなのあったような。もしかしたら記憶にないだけで実は遠い昔に観たことあったのかもしれん。
せいか

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