yawara

麦秋のyawaraのレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
4.8
妙齢の女性の家族や友人との交流と、その交流の中で彼女が人生の節目に至っていく過程とを描く。

夫婦が風船を眺める様子が印象に残った。育てた子はいずれ親元を離れる。これを風船へと重ねて物思いに耽る描写にしんみりとする。人の幸せとは?という問い掛けにもなっており、詩的で深みがある名シーン。

親の心子知らずがテーマだろうか。父母が自分のことをどのように心配しているか、思いやってくれているか、愛してくれているか、子供にはその自覚がない。これを小津監督らしいユーモアで、人と人のつながりを通して和やかに表現している。いつものキャストでドラマは進むが、広がり方や味わいが異なるのは不思議な感覚を伴う。

どのようなモチーフを描くにつけ、そこに人の営みとわびさびを見出させる小津調、恐れ入る作風です。物語のあらましを端的に示しているタイトルも美しい。
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