イクミナ

麦秋のイクミナのレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
5.0
平山周吉『小津安二郎』を読んでからの、10年ぶりかの3度目の鑑賞。小津映画を見ていると、なぜか目が潤む。それは、思いを隠した画作りがあるからだろうか?
この『麦秋』の中での移動カットは、14回あるそうだが、笠智衆の病院の庭の右移動、それに続く。高橋トヨが帰ってからのから舞台の移動、意味不明だ。後者の次のカットは、笠智衆の帰宅の道で左から右への移動。リズムか?ラスト近くの、原節子の長い泣きの芝居も、ちょっとオーバーすぎやしないか?原節子のせいで父母が「やまと」へ引っ込む?一家離散?が原因とも思えない。ラスト、長い麦畑の移動カット。徐州戦、麦畑の中の日本兵の死体、山中貞夫への思いと、言えばうなずける。小津の映画には、下の下のほうに時代の妖気みたいなものが横たわっているような気がする。情景カットが、神がかっている。
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