サン

麦秋のサンのレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
4.1
小津安二郎初作品。特集がされていたシネマ・ヌーヴォさんで視聴。日本の戦後の暮らしがなんて美しく描かれているんだろう。そして娘(紀子(原節子))が嫁に行く時の家族総出で心配をする感じや、その紀子の気持ちが伝わってきてとても面白かった。
構図が美しいとよく聞くが、低い視点で扉ごしに奥の様子を撮る感じは洒落ているなと感じたし、畳の生活をしている日本家屋だからこそよりマッチしているんだろうなと思った
単語が予測しづらくて口調が早く、声が聞き取りにくいところがあった。それでも伝わるものは十分に多かった

以下好きなシーンを箇条書きに
紀子が顔洗ってきなさいよっていうはじめのシーンすごく好き。子供が可愛いし、
親切にする、迷惑をかけないのが美という考えがこんなはっきり言葉にされてるなんて
エチケットという言葉を武器にする女性には戦後女性の立場が見直されているのが伝わってきた
碁盤を挟んで仕事仲間と話しているシーンはすごく楽しそうだった
既婚者勢と未婚者勢の戦い「未婚者は既婚者のことをとやかく言う権利なし」
子供起きてきたらちゃぶ台の下にケーキ隠すシーンはほっこりする
「メガネどこへやった」って苛立ってるおじいさんのシーンのオチは本当にかわいい
「紀子はへそ曲がりだからうまく伝えてくれ」と兄が兄の妻に障子を開け閉めしながら忍んで小声で言うところがおかしい
ハイカラな生活を送ると思われていた紀子が
「好きとか嫌いとかじゃない、この人なら心から安心できる」と言う。好きとは。結婚とは。恋愛結婚が主流になってきていたんだろうか
「のん気な子、自分1人で大きくなった気になって」「欲張りかねえ私」いつも優しいおばあちゃんが言うからより強く響く
「今が1番いい時間かもしれない」これはおじいちゃんの言葉。そう思う。家族みんな仲良くて、娘の縁談のために一致団結している。そんな中にも心配があって不満があって。そんなのを差し引いてもいい時間なんだろう。そんなものも含めていい時間なのかもしれない。戦争なんかよりもよっぽど
麥秋は麦の収穫時期で季節的には初夏に当たるらしい、晩春、麥秋、東京物語は紀子三部作と呼ばれている。どれもAmazon prime・U-NEXT・Huluなどにあるのでまた見てみたい
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