松原慶太

男はつらいよ 寅次郎の休日の松原慶太のレビュー・感想・評価

3.3
シリーズ43作目。満男君ep2。前作で浪人生だった満男君(吉岡秀隆)は大学生になっている(作品内では架空の校名になっているが、八王子なのでたぶん中大くらいの想定)。シリーズの中ではなかなかの佳作。

母親(夏木マリ)と別れ、若い女と駆け落ちした父親(寺尾聰)を追い、大分県の日田へと向かう泉ちゃん(ゴクミ)。それについていく満男と寅次郎。

泉ちゃんは「母親とヨリを戻してほしい」と伝えるために父親に会うのだが、田舎で地味に幸せそうに暮らす寺尾聰と、「愛人」というイメージとは正反対の、感じのいい女の人(宮崎美子)をみて、何も言えなくなる。

夏木マリはさすがの名演技で、寝台列車で寅次郎相手にビールでグチをこぼすシーンとか、日田の旅館で酔い潰れて泣きわめくシーンとか、非常にうまい。感情の起伏のはげしい水商売の女の悲哀をよく演じている。

あえて言えば本作で描かれる恋愛模様は、この「夏木マリー寺尾聰ー宮崎美子」の三角関係のみであり、ゴクミと満男君はそれを傍観することで成長する、という構図になっている。寅次郎はほぼ狂言回し。

しかしゴクミはあいかわらず棒演技で、満男君にたいしてどういう感情を持っているのか伝わってこない。泉ちゃんという役柄がなにも考えていなかったのか、たんにゴクミの演技が下手だったのか(たぶん後者)、そこらへんが満男君シリーズがいまいち盛り上がらなかったことのひとつの原因ではなかろうか。
松原慶太

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