midored

海洋天堂のmidoredのレビュー・感想・評価

海洋天堂(2010年製作の映画)
4.2
余命宣告された父親(ジェット・リー)が、これから天涯孤独となってしまう上に自閉症である息子の行く末を思い、命のかぎり手をつくす親子愛映画。戦闘なしのジェット・リーが予想外に良くて痺れました。

お涙頂戴物と言えばまさにそうなのですが、水族館を中心にして描かれた、おだやかなでファンタジックな世界観にひたすら癒される、癒しムービーでした。出てくるのは、身なりのきちんとした心優しい親切な人ばかりで、ケチで自己中な根性曲がりはひとりもいないし、青い水槽で泳ぐ息子や魚たちは目に美しく、題名どおりの「海の天国」です。

SNSで有名な「中国の駄菓子屋さん」さながらの売店がでてきたり、バスに車掌さんがいたりといった、ノスタルジックなイメージもありました。

それでも何より癒されたのは、ジェット・リー演ずる心優しい男ヤモメな父親と、二十歳過ぎてもまるで幼稚園児のように天真爛漫な息子が、抱きついたり隠れん坊したりくすぐりごっこなどして、相思相愛なところです。

息子が健常者であれば、心身ともに距離があるべき年代なわけですが、それがない。幼少期のままの、体でぶつかってゆく愛なのです。それがなんでこうも癒されるのだろうかというくらい無限にホッコリさせられるのです。

やはり、ものすごいカンフーをしていなくとも、ジェット・リーはジェット・リーだと思いました。体で語ってくれる俳優です。男同士の体のぶつかり合いが、カンフーから子育へ、戦いから愛に変わっただけなんだと思います。

息子のために亀の甲羅を背負って泳ぐシーンは、これまで観たジェット・リーの中で1番ミュータントタートルズだったのに無茶苦茶かっこ良くて泣きました。
midored

midored