一人旅

ハネムーン・キラーズの一人旅のレビュー・感想・評価

ハネムーン・キラーズ(1970年製作の映画)
4.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
レナード・カッスル監督作。

結婚詐欺と殺人を繰り返すカップルの凶行を描いたクライムドラマ。

1940年代のアメリカで20人以上の女性を殺害し1951年に電気椅子により処刑された実在の殺人鬼カップルをモデルにした70年代モノクロ映画。監督のレナード・カッスルは本業がオペラ作曲家という特異な経歴の持ち主ですが、初めて監督に挑んだ本作は映画通の間で後年にまで語り継がれるカルト作品としての輝きを放っています。何より、おデブで凶悪な喪女を演じたシャーリー・ストーラーの存在感が強烈で、同じく70年代カルト映画の代表格として名高い『ピンク・フラミンゴ』(1972)の犬糞喰い:ディヴァインを彷彿とさせます。

文通をきっかけに出逢い恋に落ちた看護師マーサと結婚詐欺師レイのカップルを主人公にして、結婚詐欺の標的となった女性たちが2人によって次々と殺害されてゆく様子をドキュメンタリータッチに淡々と映し出した異色のクライムドラマで、殺人鬼カップルの狂気と凶行の顛末を描くと同時に、レイに対する嫉妬心を増幅させてゆくマーサの歪な愛情とその末路をも映し出した“犯罪ドラマ+愛憎ドラマ”です。

罪悪感の欠如に言葉を失う作品であり、金銭のために無実の女性を躊躇なく毒殺・絞殺する非道な行為が淡々と映し出されます。被害者は金持ちの女性に限らず、その幼い連れ子ですら口封じのために殺害してしまうという残虐性が凄烈です。そうした凶行の原動力となるのがレイとマーサの愛情、特にレイに対するマーサの深い愛情と依存心です。マーサは愛するレイの期待に応えようとし、あるいはレイに対する嫉妬心に駆られて女性を殺害するのです。愛情と紐づけされた狂気に心を支配され事務的に殺人を繰り返すマーサと、愛情の優位性を武器に心理面で彼女を支配するレイの歪んだ男女の関係に不気味な恐怖を覚えます。
一人旅

一人旅