とうじ

ハネムーン・キラーズのとうじのレビュー・感想・評価

ハネムーン・キラーズ(1970年製作の映画)
5.0
すごいものを見た。
最高。全てが完璧。
ここまでコメディとホラーの両極端を同時に一つ作品で成し遂げている映画は無い。強いていうなら「バタリアン」がそんな映画であったが、あの映画は観客は怖がりながらも、映画と一体となって楽しむ感覚だった。本作は場面によっては、観客を映画から突き放し、不快感に近い恐怖に陥れる。
また、本作は非常に繊細なラブストーリーでもある。孤独と愛と嫉妬に突き動かされる怪物である本作の主人公の最後の着地点は「ロブスター」を彷彿とさせる、非常に力強いものだ。
しかし、本作は真面目になりすぎず、コメディであることを忘れない。その精神性はカメラにも表れており、斬新なカメラワークを躊躇なく入れていく。まるで、才能のある撮影監督がカメラを使って遊んでいるような、荒削りの才能がむき出しになっている画面で、この醜く凄惨で不謹慎な物語に軽みを付け足すことに成功している。
その遊んでいる感覚はまさにトリュフォーの映画っぽく、彼がこの映画を気に入っていたことも納得だ。「ムーンライズキングダム」でオマージュされていた。
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