半兵衛

ハネムーン・キラーズの半兵衛のレビュー・感想・評価

ハネムーン・キラーズ(1970年製作の映画)
3.9
結婚詐欺師の男と彼を愛しているがため犯行に加わった中年女による、全体的に活気の失せた生々しい中年の匂いが立ち込める犯罪ノワール。確かに美男美女は登場しないし、出てくる女性はみな年齢を重ねた人たちばかりだけれど主人公の女性マーサの若さを失いつつある肌をさらけ出す容赦のない演出の数々により絵空事ではない本当の男女のドラマを表現することに成功している。

そんな二人の犯罪行為が加速して殺人までしでかしてしまう後半の展開は殺される人間のリアクションがあまりにもリアルすぎて怖くなるが、同時にそこまでして好きな彼に愛されようとするマーサの一途さがクレイジーな純粋さがにじみ出ていて切なくなってしまう。そんな彼女の献身的な愛が男の小賢しい詐欺行為を超えてしまった終盤の犯罪とラストの手紙は、一見するとやるせないけれど愛がまるで成就したかのようなちょっとした痛快さも感じた。

狭い部屋を行き来するカメラワークや暗闇を効果的に使った映像がドラマによく似合っている。

音楽家が監督しているだけのことはあって劇伴の使い方が決まっていて、愛のない男とそんな男を愛した女による腐ったメロドラマノワールを盛り上げる。

それにしてもあの効率的な絞殺の仕方は下手なホラーの殺しかたより淡々としている分厭なものを見せられている気分になるな。
半兵衛

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