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ハネムーン・キラーズのMikiMickleのレビュー・感想・評価

ハネムーン・キラーズ(1970年製作の映画)
3.8
1970年 アメリカ映画
当初は無名のマーティン・スコセッシが監督に抜擢されたがすぐにクビになり、オペラ作曲家のレナード・カッスルが後任を担った。しかし、殺人描写が過激という事で上映がすぐに打ち切られ、カッスルは今作が最初で最後の作品となった。しかし、フランソワ・トリュフォーが「最も好きなアメリカ映画」と絶賛し、後世の映画界にも影響を与えているカルト作品。

以前、東京でレンタルを探しまわり、やっと見る事の出来たこの作品。
同事件をモチーフにした『地獄愛』による今作のリバイバル上映と再販で、やっと普通に見れる事になったので再見っ‼‼ 非常に喜ばしい‼‼

この映画は、アメリカ史に残る連続殺人事件を描いている。
1940年代。看護師のマーサ・ベックとレイモンド・フェルナンデスは、ロンリーハートという文通雑誌で出会う。マーサは、レイの稼業が結婚詐欺師であると告げられるが、彼への愛は消える事はない。次々に寂しい女性をカモにしていくレイにぴったり寄り添い、姉や妹を装って彼の稼業を手伝うのだが…マーサの嫉妬は…
計20名以上を殺害した「ロンリーハーツ・キラーズ」と呼ばれる殺人鬼カップルの誕生である。

容姿にも自分にも自信の持てないオールドミスの太ったマーサが、レイのカモたちに嫉妬する様は非常に痛々しいものだった。
気を惹かせるために自傷行為を働き、苛立ちとイライラと憎しみを抑えきれず。
嫉妬と当てのない未来。終わらない逃避行。
そして、レイの裏切り。
しかし、何が二人をそこまで繋ぎ合わせ、犯行を重ねていったのか。
それは、決して金銭ではない。

アメリカン・ニューシネマの中でも、ヌーベルバーグを特に彷彿とさせる退廃的愛と破壊的愛だった様に感じる。実存主義による不条理さ。

実際の事件の二人の悲惨な背景や事故による病的な性 欲などを描かずに、淡々と逃避行と犯行のみを映す中で、歪んだ愛と無情さと虚無感を見せつけられる。

そして、マーサ演じるシャーリー・ストーラーのふてぶてしさの中にある悲しみ、様々な事への憎しみ、行き場のない一途な愛、やるせなさを魅せる表情に魅せられる。

彼らの愛が美しいとかそういうものではない。
ラストシーンでは、人それぞれ感じ方は違うだろう。
私は、そこにしか道を見いだせなかった居場所の無さと虚栄と愛の、最後の虚しさを感じる…

異常な愛が殺人へと変わっていく狂気と切なさと痛々しさと虚無とをジワジワと感じさせてくれる素晴らしい作品。
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