TOMJFK

意志の勝利のTOMJFKのレビュー・感想・評価

意志の勝利(1935年製作の映画)
3.0
戦争は絶対に起こしてはならない!

本作は、1934年9月に開催された ナチス党全国大会の数日間を撮った ドキュメンタリー映画である
この時期のドイツを調べてみると・・・ 1933年1月、ヒットラー内閣が発足し、 ただちに独裁政治が推し進められ・・・
同年7月、他の政党を禁止 また、憲法で定められた基本的人権や労働者の権利を停止
また、国会議員の全員がナチス党員となる

1934年6月、反対派、約100名を粛清(銃殺)
そうして、本作が撮影された1934年9月を迎えている
そうした時代背景を知った上で、この映画を観てみると 集まった数十万人の国民全員が ヒットラー1人に向かって、 右手を上げて忠誠を誓っている態度を見せているように感じる ・・・極めて異常な光景である

当然、カメラに撮影された人物たちは、 後でヒットラーも見るわけだから、 みんな怖くて、 「ヒットラー政権を喜んでいるんですよ」 という表情を必死になって作っていたと思います
もしカメラの前で、 ふて腐れた表情なんかしていたら、 後で粛清されるかも知れないから、 たいへんな恐怖政治だね
ヒットラー自身の演説では、 「ドイツのため」 「労働者のため」 「階級や身分の差が無くなるよう」 「平和を愛する者たち」など、 素晴らしいメッセージも言っているが、 それらは言動不一致であったということである
数万人の兵士が街中をパレードするシーンでは、 皆、右肩には銃ではなく、 スコップ・斧・ツルハシを掛けていた
ナチス党は労働者の味方なんだというメッセージだろうが、 これも嘘っぱちで、 実際は銃を使って、反対勢力を粛清する恐怖独裁政治を展開したわけだ
数十万人の前で行う、先ほどのヒットラーの熱弁を振るう演説も、 今聞くと抽象的な主張で、何を言ってるのかわからない
そんな抽象的な政治家の熱弁に、心底、期待した国民の側も問題だ
本作は、俳優でなくヒットラー本人が存分に登場し、 彼の表情もたっぷりと見ることができるが 上述の通り、このとき既に 反対勢力を約100名銃殺による粛清をした後だ
本作のヒットラーは、口では 「素晴らしいドイツを作る。私がドイツだ」と 国民に訴えるが、 実際は、すでに大量殺人者であったということである

大嘘つき!

政権を取るなり 議会制民主主義の国家ドイツを ナチス一党の独裁制に変貌させ、 絶対的な権力を手中にするなり、 今度は、自分の気に入らない人間を 殺りくするという、とんでもない大嘘つき、 性格異常者だ!

また街中を軍隊がパレードするシーンがあるが、 ドイツの古い建物などのレトロで味がある街並みが素晴らしい
このパレードがスポーツの祭典、オリンピックのパレードであったなら・・・
スコップやツルハシを担いだ、この大行進が、道路作りや建築工事など、国作りのための労働者の大行進であったなら・・・

大声援を贈る街中の人々の期待 「ドイツの再建」という期待が裏切られることは無かったのに・・・
そして、映像に残っているドイツの素晴らしい建造物も、その後の爆撃によって破壊されることも無かったのに・・・
他の作品の映画鑑賞とは違って、 以上のような感想を持った本作の鑑賞でした

戦争は絶対に起こしてはならない!
恐ろしい歴史を学ぶ貴重な資料という意味で3つ星とします
本来、高評価にはしたくない戦争国家PR映画です 2014/10/30
TOMJFK

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